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2015年1月21日(水) Think College Vol.27

子どもの創造的な学びをつくる
〜NPO法人CANVASの現場から〜

講師:石戸 奈々子 / NPO法人 CANVAS 理事長

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世の中の課題に取り組む人のお話を聴いて、一緒に考える講座シリーズ「Think College」。
今回は「これからの子どもの学び」がテーマです。

10年以上に渡って、子どもたちの創造的な学びの場をつくり続けてきたNPO法人CANVASの石戸奈々子さんを先生に、デジタルとの向き合い方や未来の学びについて、一緒に考えてみませんか?

講 座 レ ポ ー ト

石戸

皆さん、こんにちは。CANVASの石戸と申します。私は、子どもたちの創造的な学びの場をつくるという活動を12年にわたって行ってきました。

これからの情報化社会を生きる子どもに必要とされる力は、コンピューターには絶対代替できない力としてのコミュニケーション力、そして創造力を育む活動を推進しています。

これまでは、より多くの知識を得ることに評価の力点が置かれていました。教師が持っている知識を一方向に多数の生徒へ伝達する授業形態は、均一化された知識を身につけた人材を輩出する工業社会には効果的でした。

しかし、経済がグローバル化し、大量の情報が国境を変えて行き交う社会となると、異質な文化、異質な価値観から構成される共同体の中で、大量の情報を取捨選択し、再構築し、新たな価値を生み出す力が求められます。

多様性を尊重しつつ、個に応じた学習ができる。異なる背景や多様な力を持つ子どもたちがコミュニケーションを通じて協働し、新たな価値を生み出すことができる。そんな学びの場をつくりたいと思い、2002年にCANVASというNPO法人をつくり、これまでに35万人の子どもたちに創造的な学びの場を提供してきました。

CANVASの特徴は、これまでのように子どもたちの学びを学校や家庭にだけに任せれば良いということではなく、子どもたちを主役にしながらも、学校・家庭・地域・企業・自治体・ミュージアム・アーティスト…、全ての大人が手を取り合って新しい学びの場をつくっていくプラットフォームをつくるということにあります。

例えば、毎年、子どもたちの創造・表現ワークショップの博覧会イベントである「ワークショップコレクション」を開催しています。全国から約100のワークショップが一同に集まり、世界最大級の子ども向け創作イベントとなっています。ワークショップコレクションの一貫したテーマは、「つくる」ということです。ワークショップコレクションに参加しているワークショップはすべて能動的に作り、見せ、コミュニケーションを取るタイプの活動です。

第1回ワークショップコレクション開催時の参加者は500人でした。それから10年に渡り開催を続け、2日間で10万人の子どもたちが来場するようになっています。新しい学びに対する保護者の需要の高まりを実感している。それを踏まえ、昨年度からはクリエイティブキッズデイという企画をスタートさせました。全国で同じ時期に子ども向け創作・コミュニケーションイベントを開催しよう!という運動で、初回にも関わらず全国から80箇所が参加をしてくれました。

他にも様々な取り組みを行っていますが、昨年度からスタートさせたのがプログラミング学習を本格的に全国に広げるプロジェクト「PEG(Programming education gathering)」です。CANVASでは設立当初からカリキュラムの1つとしてプログラミングのワークショップを提供してきましたが、ここ最近の子どもたちがプログラミングをする取り組みの盛り上がりを受け、改めて全国に本格普及する活動をスタートさせました。

昨年1年間だけで2.5万人の子どもたちにプログラミング学習の場を提供してきました。なぜ子どもたちにプログラミングをする場を提供しているのか、という質問をよく受けますが、目的は子どもたちがコードを書けるようになることではありません。私たちが伝えたいのは、あくまでも「つくること」です。

つくること、表現することの一手段として、プログラミングが子どもたちにとって身近なものになってきました。子どもたちは今までにはない新しい表現手段を手に入れることができるのです。立体物を動かすこともできます。子どもたちにとっては、粘土があって、クレヨンがあって、同じように、プログラミングがあるのです。

重要なのは、プログラミング「を」学ぶことではなく、プログラミング「で」学ぶことだと考えています。このプロジェクトを通じ、論理的に考え、問題を解決する力、他者と協同し、新しい価値を創造する力を養ってほしいと願っています。

私たちはよく子どもたちと一緒に、未来をつくるというワークショップをやっています。未来のクルマを考えよう、未来の病院を考えよう、未来の電車を考えよう。

子どもたちは不思議な力を持っています。まずこどもの発想という力です。こどもというと楽しい欲求を追求する無邪気な夢想家というイメージがあるかと思います。もちろんそういう面もあります。

しかし、それだけではないのです。新しいテクノロジーの提案。環境問題や高齢化社会に配慮した提案。直感力に満ちたソリューションの設計者であり、社会の改善を願うモラリストでもあるのです。

もう1つの力は、子どもの存在、それ自体がもつ力です。みんなを明るく笑顔にし、社会を元気にする力。「街中こどもテレビ」という企画を行ないました。子どもたちの未来のアイディアを街中のデジタルサイネージに流してしまおう!という企画です。電車、バス、空港、学校、病院、コンビニ・・・・約1万の施設がサイネージを提供してくれました。子どもの存在はまわりの大人を巻き込む力があるのです。

私が座右の銘にしている言葉があります。私が今の活動を始めるにあたって大いに影響を受けたMITメディアラボで習った言葉なのですが「Imagine and Realize」という言葉です。日本語にすると両方“ソウゾウ”です。イマジンする“想像”と、リアライズする“創造”。

私は子どもたちに、頭で考えるだけではなくて必ず形にすること、必ず実行することが大事だということを伝えていきたいと思っています。頭の中で想像、イマジンして、実際に創りだす、リアライズすること。

私は、これからもこどもたちがイマジン&リアライズできる環境を、イマジン&リアライズしていきたいと思っています。本日は、ありがとうございました。

講 師

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石戸 奈々子

NPO法人 CANVAS 理事長

東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、子ども向け創造・表現活動を推進するNPO『 CANVAS 』を設立。産官学連携による子ども向けワークショップの開発とその全国普及に取り組む。
実行委員長をつとめる子ども向けワークショップの博覧会『ワークショップコレクション』は、2日間で100,000人を動員する。株式会社デジタルえほん代表取締役社長、慶応義塾大学准教授を兼職。デジタルえほん作家&一児のママとしても活動中。
著書に『子どもの創造力スイッチ! 遊びと学びのひみつ基地 CANVASの実践』『デジタル教育宣言 スマホで遊ぶ子ども、学ぶ子どもの未来』など。

NPO法人 CANVAS