西武西武渋谷店

2015年2月19日(木) Think College Vol.28

女性からだ会議

講師:難波 美智代 / 一般社団法人シンクパール 代表理事

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世の中の課題に取り組む人のお話を聴いて、一緒に考える講座シリーズ「Think College」。
2月のテーマは「女性のからだを考える」こと。

子宮頸がんという病気をご存じでしょうか。若い人にとって、がんは縁遠いものかもしれません。ところが今、20〜30代の女性のあいだで、このがんにかかる人が増えているといいます。

頭やお腹が痛いとか、ちょっとした不調を感じても、忙しさにまぎれ、遊びたい気持ちを優先してしまいがちな私たち。自分のからだのことを、もっとちゃんと意識したほうがいいのかもしれません。そのためにはどうしたらいいか、一緒に考えてみませんか。

講 座 レ ポ ー ト

がんをきっかけに意識した自分のからだ

難波

一般社団法人シンクパールの難波美智代と申します。私たちが開催する勉強会では、いつも最初に、10分ほどの映像をご覧いただいています。「うまれる」という映画のスピンオフ作品で、不妊と流産をのりこえ、高齢出産で赤ちゃんを授かったご夫婦の姿を見守るミニ・ドキュメンタリーです。あたらしいいのちがうまれてくる喜びと同時に、私たち自身もまた同じように、みんなに笑顔で迎えられて、家族に大事にされてきた、それがつながって今の自分がある、ということを心で感じていただきたくて、毎回上映しています。

まずは、私がこのシンクパールを立ち上げたきっかけを、皆さんにシェアしてみたいと思います。

アコヤ貝は約10か月間かけて真珠を育みます。
子宮もまた、十月十日の日々をかさねて、あたらしい命を育みます。

人類すべてのいのちの源である、みえない子宮に、もっと気持ちを寄せてみよう。
子宮のデキゴトから未来のシアワセを考えてみよう。
Think Pearl(シンクパール)は、そんな思いがこもった活動です。

シンクパールをはじめたきっかけ。
2009年、36歳の誕生日を迎えるころ、初期の子宮頸がんであることがわかりました。
それまでの人生といえば、願い、そして必死にに努力をすれば、そのほとんどが叶うことばかりでした。

バブル最期の銀行人事部に入行。29歳で独立、起業。31歳で結婚、33歳で男の子を出産しました。
太陽という息子は、ワタシの未来そのもの。
女性は女性として、仕事をもち、社会と関わるからこそ、すべてがうまくいくと信じていました。

でも、がんになってしまいました。
ワタシは死んでしまうのかな、とてもとても不安でした。
ちいさいころから風邪すらひかない健康優良児。婦人科系のトラブルも一切なかったのに。

でも、がんになってしまいました。
発覚したのは、たまたま受けた検診によってでした。
自覚症状もなにもなく、病気がわかってもなお、身体は普段と変わりのないものでした。
わかっていたのは、がんであること。そして、手術で子宮をうしなうことでした。

ワタシはすっかり自信をなくしてしまいました。子宮をうしなって、女性でいられるんだろうか。
落ち込みに耐えきれず、病気の予防を啓発することにしました。
一生懸命、検診と予防接種の大切さをうったえてみました。
なぜなら、子宮頸がんは、防げるがんだから。

でも、ますます自信をなくしてしまいました。なぜ、ワタシは防げなかったんだろう。
無事に手術は成功し、今はピンピンしています。
でも、もう若々しい卵子もないし、いのちをはぐくむ子宮もありません。
さまざまな選択肢がなくなっている。その事実をまのあたりにしました。

生きていくなかで、どんな選択がただしいのか、正直わかりません。
ただ、選択できる自由があるのは、とても素晴らしいことだとおもいます。
病気になって、あらためて、いのちと心を意識することができました。

いのちと心があるから、悩んだり苦しんだりもします。
でも、新しいいのちにふれたとき、閉じるいのちに向き合うとき、いのちのありがたさを感じます。
いい香りや音にふれたとき、だれかの頑張っている姿を見たとき、心が希望にみたされます。

そんなことを日々に積み重ね、自分にあったシアワセを、みつけていくことが大切なのだとおもいます。
そして、わたしたちは、シアワセを感じられる健やかな心とからだこそが、
とても大切なのだとおもいます。
その心とからだは、気付いたときから変えることができます。

小さいころに夢を見た、パパになること、ママになること。
その夢を病気によって、理不尽に奪ってはいけない。
希望にみちた未来の可能性をうばっては絶対にいけない。

だから、みえない子宮にも気持ちをよせて、前向きな行動をとること。
万が一、病気になってしまっても、前向きな未来を築いていけるように。
みらいの笑顔と、いのちをまもるために。
みんなのシアワセが、かならず未来をよくすると信じています。

若い女性に増えている子宮頸がん

難波

子宮頸がんという病気について、知らない方もたくさんいらっしゃると思います。知っていて、定期的に検診に行くことを心がけている方となると、まだまだかなりの少数派です。

「私、病気になんてならないから」って、楽観的に考えていませんか。私は、たまたまうけた検診によってがんを発見できました。自覚症状もなにもなかったので、いきなり「あなたは子宮頸がんです」っていわれて、ほんとうにショックでした。なにより、自分がなにも知らないことがすごく不安だったんです。勉強しなかった自分のせいでもあるけれど、今までの人生で、そういうことを学ぶ機会ってあったのだろうか。振り返ってみたら、なにもなかった。

日本の性教育っていろいろ課題が多いと思います。なかでも、学校教育の中で、セックスをすることや避妊教育など、将来子どもを生むことに対する教育というものがほとんどない。5年前、シンクパールの活動を始めるにあたって、勉強してはじめて、「35歳になるころから卵子が老化して、自然に出産するためにはリスクが増加する」ことを知って、すごくびっくりしたのを覚えています。

「子宮ってなに?」まずそこから始めましょう。子宮は、赤ちゃんのやわらかなベッドです。その入り口の部分が、子宮頸部。みなさん、ここから生まれてきました。

今、日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなるという統計があります。がんになる原因は食生活、喫煙などの生活習慣が3分の1を占め、老化とともに増加する病気です。そのなかにあって、子宮頸がんは、若い女性のあいだで増えています。

若い人にとって、がんって、なかなかぴんとこない病気ですよね。でも、子宮頸がんになる年齢は、30代がピークです。20代の前半から少しずつ増えはじめ、いちばんなりやすいのが35歳。年間約1万5000人が子宮頸がんになり、3500人が亡くなっています。

私の知っているなかで、いちばん若くして亡くなった方は19歳でした。結婚する前、出産する前の女性たちのからだのなかで、気づかないうちに病気が進行し、子宮を摘出しなければならない状態になったり、いのちを落としてしまうのが現状です。

子宮頸がんになるとどうなるんでしょう?
たとえば毎月の生理が重い、不正出血がある。そういう症状が出た時点で病院にかかると、もしそれが子宮頸がんであれば、かなり進行しているケースが多いのです。治療には多額の費用がかかります。回復すればまだしも、いのちすら失ってしまうかもしれません。回復後に後遺症が残ることもあります。

私たちが主催した「NIPPON女性からだ会議2014」のシンポジウムで、女優の原千晶さんにお話をうかがいました。彼女は30歳のとき、子宮頸がんと診断されて、怖くなって逃げてしまったそうです。必要といわれた手術もしないままでいたら、5年後に子宮体がんという、べつのがんを発症し、同時に子宮頸がんも進行していて、子宮も卵巣も摘出する大手術になってしまいました。

そこまで進行してしまうと、排尿や排便にも障害が残ります。たとえば尿意を感じることができなくなって、つねに時間をみはからってトイレに行かないといけないとか。また、リンパの流れも滞って足がむくみ、パンパンに腫れあがってしまうそうです。月経の周期がなくなるため、更年期障害と同じ状態になり、頭痛やほてりにも悩まされるといいます。

子宮頸がんは予防が可能

難波

子宮頸がんは、原因がはっきりしている唯一のがんといわれています。原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)。子宮頸がんの原因がウイルス感染であることを解明したことで、ドイツのハウゼンさんという医師はノーベル医学賞を受賞しました。

じつはHPVはどこにでもいるウイルスです。感染のきっかけは、セックス。性交渉のときに膣の中に入り、すみついてしまったウイルスによって、5年から10年かけてがんに進行します。

初めてセックスを経験してから2年以内に、80%くらいの女性が一度はHPVに感染するといわれています。感染しても自覚症状はなく、免疫力によって体内からは約2年で90%のウイルスが排除されます。ところがウイルスが排除されずに、長期間にわたって感染が持続すると、一部ががんに進行します。だから、がんになるまで、まったく気づかないのです。目安としては、感染した人の1000人に1人が進行するがんになります。

だれもが、知らないあいだになる可能性のあるがん。早期に見つけるためには、検診しかありません。
2009年のOECDの発表によると、国別の子宮頸がんの検診受診率は、アメリカ、イギリス、フランス、韓国などでだいたい70〜80%。ところが日本では、わずか24.5%、OECDに加盟している先進諸外国のなかで最低レベルです。20〜24歳では10%にとどまっています。

どうしてなんでしょう? 忙しいから? お金がかかるから? 私たちは、よほど不調がないとなかなか病院に行きませんよね。たとえばアメリカでは医療保険に加入できない人も多く、ちょっと歯医者にかかるだけで100万円くらい請求されることもあります。公的医療保険制度が整っている日本では、そんなにお金はかかりません。病気になったら病院にいけば治してくれる。だから、そこまで予防に熱心にならなくてもいい。そんな感覚があるようです。

私は、5年間この活動をつづけてきて、今もなお伸び悩んでいる検診率を前に、どうしたらいいだろうと考えつづけています。そこで、今回のように、みなさんにこの子宮頸がんというものを知っていただくと同時に、検診率を上げる方法についてディスカッションできる場づくりを心がけています。

「+700万人検診に行こう!」

難波

シンクパールの活動のひとつは、話題づくりです。冒頭で見ていただいたドキュメンタリーや、子宮頸がんで亡くなった女性のご家族が手記をまとめた本『Dear姉ちゃん』の著者にあたる彼女の弟さんと活動したり、東京都や岩手県、大阪府など、女性の健康に対して前向きな自治体と一緒にイベントを企画したり、テレビやラジオ番組に出演して情報をお伝えしています。

そして、検診を習慣にする社会づくりを目指し、昨年の12月に「+(プラス)700万人検診に行こう!」というよびかけ運動をスタートしました。厚生労働省では検診率50%という目標値を設定していて、最近検診を推奨する広報活動や、自治体への費用の補助、医療機関との連携など国も動きはじめています。

なぜ「プラス700万人」かというと、現状の検診率24.5%を50%にするためにはあと700万人の検診が必要なのです。この数は、女性の日本の人口の20歳から49歳までの人口の約3分の1にあたります。3人に1人があらたに検診に行けるようになればよいのです。

そんなことを語り合う場づくりのため、去年1年間、月例勉強会をおこない、年末には「NIPPON女性からだ会議2014」のシンポジウムも開催しました。

病気をテーマにすると、病気に興味のある人、悩みをすでに抱えている人しか集まらないかもしれない。そこで、パネリストには食の専門家のエリカ・アンギャルさん、ブロガーのはあちゅうさん、快眠セラピストの三橋美穂さんなどをお呼びして、「生活習慣を整えることから、からだのことに向き合おう」というテーマを展開しました。

それから、人づくり。ミス・ユニバース日本一を目指すファイナリストのみなさんに、私もトレーナーの一人として関わっています。大会の前にはビューティキャンプといって、2週間にわたり、ホテルに泊まり込み、集中トレーニングが行われます。そこではステージでのウォーキング、立ち居振る舞いや、スピーチといったレッスンのほかに、食や睡眠、そしてからだについてのレクチャーもあります。

世界で活躍するためには、ただ単に細くてきれいなだけでは戦えません。正しい脂肪や筋肉をつけて、正しい生活習慣をおくることによってはじめて、オーラを放つ美しい体づくりができる。なおかつ、自分のからだの変化とリスクについてもきちんと知識を身につけていることによって、自信をもって未来に向けての活動をすることができるということをご指導しています。

シンクパールと一緒に考えたい、これからの課題

難波

これはぜひみなさんにお聞きしたいんですけど、どうしたらみんな、子宮頸がんを自分のこととしてとらえるようになるでしょうか。検診率をあげるための私たちの活動には、まだまだ課題があると感じています。

まず、子宮頸がんについて知る機会があまりにも少ないこと。知りたくてもだれに聞いてよいのかわからない。難しそうだし、興味がないという声もよく聞きます。優先順位が低いため、なかなか積極的な受診につながりません。時間とお金がない、めんどうくさい。根底にあるのは「私は病気にならない」という根拠のない自信と、病気への恐怖です。「なにか見つかったらやだから、検診にはいかない」という人もほんとうに多いんです。

メディアなどのちょっと偏った情報であるとか、根拠のない口コミから広がるネガティブな消極的なイメージも妨げになっています。「生理が重い」くらい、よくあることと片づけてしまいがちですよね。でも、そんなちょっとしたことが病気のサインかもしれません。素人である私たちが、専門家の判断を仰がずに、身近な情報だけで安心してしまって大丈夫なのでしょうか。今は、子宮内膜症とか子宮筋腫もとても増えています。やはり不安なことがあったら、すぐ専門家に相談することをとくにおすすめします。

私たちが心がけていることは、身近なたとえと言葉で、わかりやすく伝えること。情報は少なく、シンプルに、みんなが口コミしやすいように。からだのことって、プライベートなことなので、なかなか話題にしづらいですよね。だから、あえてそういうことを話せるような場づくりも心がけています。

それから、相手のメリットを引きよせること。さきほどのミス・ユニバースのときは、検診の話をすると、「私も受けます!」とみんなすごく積極的です。「検診を受けている」というのが、ファイナリストにとって、アピールになるんです。そんなふうに、たとえば大学生が検診に行ったら単位がとれるとか、なにかその人が取り組んでいることに、検診がプラスになるよ、とメリットを引きよせてあげることが必要かもしれません。

イベントのトークショーに、モデルの冨永愛さんをお呼びしたことがあります。冨永さんはすごくプロ意識の強い方で、お子さんもいらっしゃるし、当然のように「毎年、検診に行ってるわ」って。そういう素敵な女性をロールモデルとして示し、からだのチェックとメンテナンスをすることって素敵なことですよ、と発信しています。

とはいえ、最初に行った婦人科で嫌な思いをしてしまうと、二度と行きたくなくなりますよね。だから、医療機関や患者との関係づくりも課題です。おたがいが歩み寄れるようなコミュニケーションの取り方もさぐっていきたいですね。

それから、私たちが意識を高めるだけでは解決しない問題もあります。がん検診を受けなさい、という法律はありません。それを法律化したり、企業でそういう仕組みや規定をつくったり、法とお金の整備も必要です。今、私たちは、乳がん、子宮頸がんといった女性のがんの検診促進を目指す、超党派の議員連盟を組織してもらおうと動いています(「乳がん・子宮頸がん検診受診促進議員連盟」はこのトークのあと、2015年3月5日に発足)。これからのことになりますが、議員の先生方に知識や課題を整理してお伝えすることを通して、社会を変えていく、そんな役割も担っていきたいと思っています。

目指しているのは、だれもが検診やかかりつけ医の情報につねに触れている社会、そしてみんなが「検診行きなよ」と呼びかけ合う社会です。そのために、ポスターをつくるなどして啓発活動も進めています。

私が子宮頸がんの診断を受けたのは2009年の10月。翌2010年の1月に手術を受けてから先月でちょうど5年が経過し、無事完治をしました。子宮は摘出することになってしまいましたが、ご覧の通り今はすっかり元気です。それは初期、早期の段階で発見することができたからです。自分が「患者」を卒業した今、これからもっともっと多くの人たちや、涙の乾かない女性たちに対して、シンクパールの活動を広げていきたいと考えています。

参加された皆さんからの質問

ーー

検診は、どのくらいの頻度で受けたらよいでしょうか?

難波

1年に1回は行ってください。検診が無料になったり安くなる自治体の補助は2年に1回ですが、忘れがちですよね。だから、毎年「おめでとう」と、いのちへの「ありがとう」を込めて、お誕生月にいくことをおすすめしています。

ーー

検査で陽性の反応が出たら、どうしたらいいでしょう?

難波

検査に引っかかった人は状況に応じて3か月に1回程度の検診を受けます。HPVには約100種類あって、がんに進行しやすいのはそのうちの17数種ほどです。種類をチェックすることは可能なので、その検査をおすすめします。万が一、進行しやすいタイプだったとしても、いっしょにつきあっていこう、くらいのポジティブな気持ちをもつといいですよとお伝えしています。

難波

今日この場所で、みなさんにお話できたことには、きっとなにか意味があると思っています。さっそく検診に行くとか、だれかに伝えるとか、とにかくなにか1つお土産にもって帰って今後につなげてください。「+700万人」は意外に簡単で、ここに40人の方がいるとして、1人が受け取った情報を3人に伝えることを15回繰り返すと700万人になるんです。そんなことを考えながらお帰りになってください。ありがとうございました!

講 師

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難波 美智代

一般社団法人シンクパール 代表理事

金融機関、外資系、ITベンチャー等企業人事、秘書業務を経て2002年に独立。女性向けイベント企画、マーケティング事業を行うなかで、2009年子宮頸がんを罹患。2009年12月にNPO法人を設立後、メディア出演、講演活動を通して自身の経験を発信。現在は一般社団法人シンクパールの代表理事として『女性からだ会議』『+700万人検診に行こう!よびかけキャンペーン』を展開。ウェルネスな暮らしの智恵をだれもがシェアできる社会づくりに取り組んでいる。
名古屋セントラルライオンズクラブ初代会長。平成23~26年度NHK視聴者会議委員(愛知県)、性と健康を考える女性専門家の会会員、基礎体温計測推進研究会会員、2015ミス・ユニバース・ジャパンビューティキャンプ講師。

一般社団法人シンクパール