西武西武渋谷店

2016年9月21日(水) Think College Vol.47

Tシャツの購入で、みんなが参加できるチャリティー体験。
〜NGO/NPOに寄付を集めるソーシャルウェアブランド「JAMMIN」〜

講師:高橋佳吾 (JAMMIN合同会社 Co-founder/COO)

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世の中の課題に取り組む人のお話を聴いて、一緒に考える講座シリーズ「Think College」。
今回のまちの先生は、デザインの力を使い、誰もが参加できるチャリティー文化をつくり
NPO/NGOを支援する高橋佳吾さんです。

高橋さんのブランド「JAMMIN」では、
毎週、新しいNPO/NGOと取り組む課題を紹介し、それらをTシャツのデザインに落とし込んで販売、
2014年4月のブランド・スタートから累計で600万円以上をチャリティーしました。
今も、毎週新作デザインを欠かさずリリースし続けています。

もとは、国際協力分野の現場で目の当りにした現状と理想に葛藤を覚え、
仲間と社会貢献を前提としたビジネスモデルを確立してきた高橋さんと、
「新しくて、楽しくて、カッコイイ」チャリティーの形について、一緒に考えてみました。

応援する気持ちを「見える化」する

高橋

こんばんは、JAMMIN合同会社の高橋といいます。
JAMMINとは、ひとことでいえば京都発チャリティー専門のファッションブランド。よくNPOに間違えられるんですけど、普通の民間企業です。わたしたちの会社の目的は2つ。NPO/NGOが社会貢献活動に注力できるように資金を提供していくこと、そして、それを通じて世の中の問題を解決してもらうことです。
ジャムセッションって、いろんな楽器や歌が自由に入り混じりながらひとつの音楽を奏でていきますよね。チャリティーもまた、決まった人がやるものではなくて、誰もが気軽に楽しく参加できるものになってほしい。そんな思いを込めて「JAMMIN」というというブランド名にしました。

具体的な活動は、チャリティーTシャツを販売するECサイトの運営です。毎回1テーマで、チャリティー先となるNPO/NGO団体は毎週替わります。キャンペーンはどれだけ大きなNGOでも小さなNPOでも等しく1週間だけ。そのTシャツを毎週、毎週つくっているというのが大きな特徴です。

今、日本にNPO団体は5万、一般社団法人が8万あります。わたしたちがどの団体を紹介するかを決めるルールは3つです。まず、日本に法人があるか。財務諸表や会計が公開されているか。そして重要なのが「JAMMINヤバイ!」と思ってくれているかどうか。つまり、わたしたちの活動を気に入ってくれていることが条件です。なのでほぼ全部のNPO/NGOが対象になっています。そのなかで、ある程度大きな団体と、個人レベルなどで小さいけれど頑張っているところまく取り混ぜながら取り上げさせていただいています。

週替わりといっても、さすがに毎週毎週てんやわんやというわけにはいかないので、3か月くらいのスパンである程度まとめて進めます。まずは1週間くらいかけてNPOさんに一気に声をかけ、つぎに取材をしてデザインのイメージをあらかたかためておき、あとは仕上げをするだけという段取りです。テーマをアップする3か月前には準備ができた状態になっています。

そして、毎週月曜日の午前0時に、ホームページ全体が新しいテーマに切り替わります。たとえば、ある週のテーマがLGBTの雇用支援のNPOだったとすると、週が明けて月曜日の午前0時になったら、今度は引きこもりの支援をしているNPOのTシャツの販売に替わる。ずっとこういうサイクルで回し続けて、2年半ほど経ったところです。

JAMMINでは、自分たちでNPOの活動を取材し、インタビューをとって、自分たちの言葉で伝えることを大切にしています。行けるときは活動の現場にも足を運びますし、支援されている側にも話を聞いたりしながらホームページの文章を書きます。

活動をスタートしたばかりの2014年、ご自身の娘さんが原因不明の難病になってしまったお父さんが立ち上げたNPOのTシャツをつくったことがあります。

最初は病名すらもわからないなかで、娘のために手を尽くし、ようやく海外の文献で「レット症候群」という病名を突き止めることができた。お父さんは自分の体験から、そういう子どもたちはきっと日本中にいるはずだと考えました。そして、そういう子どもたちを繋いで、支援していくためのNPOをたったひとりで立ち上げた。わたしたちはそれをTシャツを通じて紹介したわけです。

これまで、NPOの活動を応援する方法といったら、せいぜい寄付をしたりするくらい。ミュージシャンのファンがバンドTシャツを着る、みたいなライトな繋がり方がNPOにはじつはありませんでした。そういった意味で、応援する気持ちを「見える化」するというのがわたしたちの狙いのひとつです。たとえばダウン症協会というNGOのイベントのときには、みんなでTシャツを着てみんなの繋がりを見える化し、イベントを盛り上げるということもしました。

わたしたちのサイトからNPOの活動を知って、実際にスタッフとして参加するようになった人もいます。Tシャツを通して、社会貢献に参加するためのフィールドを見つける手助けができたわけです。
もうひとつ大切にしていることが、チャリティーが終わったあとのフォローです。チャリティーの入金後、それがどう使われたかを取材して、それをブログ形式で発信しています。そのテーマで購入された方には、全員にメールでもお送りしています。

「自分の手でかなえられること」を探して

高橋

そもそもわたしたちが「なんでこんなことをしてんの?」というきっかけをお話ししましょう。
わたしは今33歳で、2歳3か月の娘が1人います。出身は名古屋市で、大学院を卒業するまでの24年間はずっと名古屋に住んでいました。
大学では土木の研究をしていまして、コンクリートを割ったり、水槽の中でばかでかい波をつくって崩れる様子を研究したり。といっても、じつは大学にはぜんぜん行っていなくて、日中はバイト、夜な夜な名古屋のクラブで遊び、昼間で寝てバイト……という狂ったような生活をしていました。でも、あるとき二日酔いで見ていたテレビでたまたま、すごく好きだったヒップホップのアーティストがアフリカにいって井戸を掘るというドキュメンタリー番組をやっていたんです。

世界で起きていることなんてなにも知らなかったんですが、ただ、自分の好きなアーティストが「その問題を解決したい」と訴えている姿に衝撃を受けました。そして「これ、自分の仕事にしたらぜったい一生楽しいな」と気がついて、真面目に土木をちゃんとやろうと決意したわけです。それが大学院の1年くらいのときのことでした。

国際協力に憧れ、ありがたいことに土木の設計や企画をするコンサルタントの会社に入ることができました。業界でトップの企業だったので、扱うプロジェクトはどれも大規模なもの。たとえばフィリピンの水道計画の30年後を現地の人と一緒に考えようとか、何十億、何百億円というお金が動くようなものばかりでした。それはそれでやりがいもあったし、楽しかったんです。でも、わたしが見たヒップホップのアーティストの風景と違うな、と感じ始めてしまった。

もっと、ほんとに自分たちの手でかえられることはないだろうか。

僕は水に関する土木が専門なのですが、たとえば井戸は10万円くらいあれば掘ることができます。井戸1つで100人くらいの人がずっと暮らしていける。だったら、そのための10万円をちゃんと儲けるほうが自分のやりがいも大きくて楽しそうだなと思って、会社をやめたんです。そして同期の西田と二人で会社を立ち上げ、現在ではデザイナーの日高も加わって、3人体制で今に至っています。

アパレル業界での挑戦へ

高橋

少し前のデータですけど、世界には1日1.25ドルで暮らしている人が12億人いるといいます。まだ十分な栄養を取れていない人が8.7億人弱。そして7.6億人の人が、安全な飲み水までたどり着けていません。
ある学者の計算によると、毎年30兆円くらい投資したらこれらの問題は解決できるそうです。けれども実際には、世界中の先進国からお金を集めたとしても13兆くらいにしかならない。あと17兆円が必要とされているのが実情です。この13兆というのは政府レベルの話。だったら、もっと普通の、わたしたちレベルの草の根活動を広げていけばカバーできるかもしれません。

視点を変えて、寄付市場を見てみましょう。アメリカでのチャリティーの総額は年間23兆円くらいといわれていますが、日本はその20分の1 以下の1兆円程度。人口は3分の1なのに、です。

もっとも、寄付市場には関しては、少しずつ変化が出てきています。たとえば、みなさんご存じのフェアトレード。はじまりはコーヒーなどでしたが、アパレル業界でも最近はメジャーになってきていて、市場もどんどん伸びてきています。認知度も高まり、少しずつ市民権を得てきているようです。

その先には「エシカル」という概念があります。ここでは、社会貢献や環境に負荷をかけすぎていないかどうかなど、「倫理的=ethical」に正しいかどうかを問う消費活動をさします。この言葉を知らなくても、聞けば「それはいいね」と賛同してくれる人はまだまだたくさんいるでしょう。わたしたちがターゲットにしているのはそういう人たちです。

そこでキーワードとして絞り込んだのが、「かっこいい」ということです。どんなものがかっこいいのか。わたしたちが調べていたNPOの事例にアメリカの「charity:water(チャリティー・ウォーター)」があります。どう見ても単なるクラブやファッションショーなのですが、これがNPOが主宰するお金集めのイベントなんです。クラブを借り切って、音楽をかけながらその年の活動費を募る。日本でいうところの音楽フェスみたいな規模感で、コンセプトがぜんぶチャリティー。前述したアメリカの23兆円と日本の1兆円という違いは、こういうカルチャー的なところからきているのではないかと感じます。

正直なところ、わたしたちは最初、土木のことばっかりやっていて、ファッションのことは好きだったけどよくわかりませんでした。いろいろな業界の方に話を聞いていたときに、アパレルの仕事がどんどん減っていて、工場はどんどんつぶれ、仕事もなくなっていることを知りました。一方で、昔からやっていた職人さんたちの間にはいい技術が継承されていて、ただ売り方がよくわからないという。そんなふうに、ほんとうにもったいないところがたくさんあったので、わたしたちにできることがあればお手伝いさせてください、と声をかけながら、ものづくりを展開するようになっていきました。

そしてもうひとつ。これも重要だと思うのが「わかりやすさ」です。JAMMINでは、「すべての商品が700円チャリティー」。「売上の5%」とか、そういう面倒なことは一切なしにしています。

利益と社会貢献のバランス

高橋

一律700円をおおざっぱに計算すると、だいたい売上の25%くらいをチャリティーしていることになります。それでどうやって企業として成り立っているのか。「ちゃんと食えてるのか?」とよく言われるので、ここでご説明しておきましょう。

一般のアパレルビジネスモデルをみると、原価として原材料があり、営業費や店舗費、人件費、そのうえに在庫リスクがあります。利益の中に、売れ残る部分を加味して値段をつけるのが普通です。それをさっ引いた上に営業利益がのってきて、それがだいたい5〜10%というのが業界の平均です。

JAMMINの場合は、まず出だしから常識とは違っています。日本製のTシャツをつかっているので原材料は高め。反面、ネットで販売しているので、注文があった分をプリントして出荷するというしくみにしているので、在庫リスクはまったくのゼロです。

営業費や店舗費も、ネットなのでかなり比率が小さくなっています。ここまでできるからこそ、販売価格がそもそも低めでもチャリティーというのが捻出されてくるわけです。むしろ、利益率で見ると一般的なアパレルの販売よりもよかったりします。

けっして無理はしていないことはおわかりいただけたでしょうか。この先、アパレルブランドとして多くの方に知っていただければ、事業としてももっと成長できると思います。

最近ではアパレルの本丸も攻めていまして、いわゆる普通の服屋さんでの取り扱いも少しずつしていただいています。おもにわたしが営業に行ってるんですけど、それが全部飛び込みなんです。
「こんにちは」からスタートして、「チャリティーしてみませんか?」とかにやにやしながら言ってみる。かなり怪しげです。でも、じつは服を売ってる方のなかには、服を売っていることにそこはかとない罪悪感をもたれている方もたまにいらっしゃるんです。毎シーズン、新しい服を提案はしているんですが、心の中では「去年とあんまりかわってないじゃん」と思っていたり。店員さんと親しくなって、そういう話をいろいろしてくれるようになったところで、「うちのTシャツを売っていただいたら、チャリティーふえますよ。社会のためになるし、店員さんもハッピーじゃないですか」と持ちかける。すると「それおもしろいですね」と賛同してもらえることも多いのです。今、関西を中心に30店舗くらい置いていただいて、さらに少しずつ広がりつつあります。

JAMMIN’sスタイル

高橋

スタートした当初のわたしたちは、アパレル未経験者どころか、クラブ行っておねえちゃんにもてるためだけに服を買っていたような2人。企業で5年間ビジネスの経験をしたことは大きかったのですが、接客はもちろんTシャツなんかつくったことはありません。
そこでわたしたちがとった作戦は「ファイト一発!」悩んでいる時間があるんだったらまず人に会って、とにかくやって、それから考えようというやり方です。

会社をやめるまでは東京にいたので、路面店をひたすらめぐりつづけました。男二人でギャルショップに入って、タグがどうとか素材がこうだとかコソコソしながらチェックしてまわったり。ECサイトもたくさん見ました。あとはネット関係で販売をされている企業にヒアリング。東京で会えるかぎりはひたすら会いに行き、イベントがあれば顔を出し……。プレスリリースをつくってファクスで送り、ぜひ掲載してくださいと電話攻勢。なんらアイデアがなかった代わりに、そういう地道なことをずっとやってきました。

ありがたいことに「マジでがんばってるね」とか「可哀想だからのっけてあげようか」といった、こちらは全然狙っていなかった効果もありました。日経、読売、京都新聞、それからラジオなどでも紹介していただきました。ソーシャル系では、「ソトコト」さんがかなり早い段階で見つけてくださったり。テレビの「ニュースゼロ」に出させてもらったときは、反響の大きさに、やっぱりテレビのパワーってすごいなと思いました。チャリティー以外の部分にも注目してもらえるようになってきて、デザインの専門誌からのお声もかかったりしています。

これまでの経験で感じたことですが、なにかを開発するっていうのは、お客さんがほしいものをはやくつかんで、早く出すこと。そのかわりコストをかけずに、失敗しても死なない範囲で投資して、まずはちょっとだけやってみるということなのかな、ということです。

JAMMINでは、毎週週替わりでこれまでNPO/NGOを120団体ぐらいご紹介してきました。チャリティーの総額では700万円。1枚700円で、だいたい1万人くらいの方に買ってもらった計算です。たぶんアパレルのスタートアップで、ドシロウトが2年半で1万枚Tシャツ売ったというのは、かなり成功した例だと思います。一部上場企業さんから、一緒にTシャツつくりませんかという話をいただいたり、手ごたえとともに、広がりも感じているところです。

今後も、毎週欠かさず週替わりで、1年に50団体。これはずっと変わらずにやり続けます。そして年間1000万円くらい、1団体に20万円ずつくらいのチャリティーが目標です。

もっと先の話をすると、Tシャツに限らず、チャリティーかチャリティーでないかとか悩まなくても、全部がそうなったらいい。たとえばビールを飲みに行ったら、「じつはこれがチャリティーつきビールでした」とか、そういうものが当たり前になって、消費と寄付がインタラクティブにぜんぶ混じっているような世の中にしたいなとずっと考えています。

その一歩としてわたしたちは、アパレルのなかで活動しています。アメリカの都市名とか、なかなかメッセージ性が見いだせないようなTシャツを着るくらいだったら、JAMMINのほうがかっこいいよ、そんな価値観を提案していきたいなと。渋谷の街を歩いていて、普通にJAMMIN のTシャツを着ている人に出会う、というのがひとつの成功のイメージですね。

そしてゆくゆくは縫製工場の設立。Tシャツの枚数が増え、ひとりふたりの小さな工場では回らないくらいのロットになってきているからです。わたしたちが仕事を出している会社は、息子さんがダウン症の方で、この春高校卒業されることになっています。そこの社長のお母さんをトップにすえて、いろんな方に縫製の技術を教えながらみんなの就労の場になるような新工場をつくりませんかという話も持ち上がっています。工場といっても、アパレルの場合はある程度のスペースにミシンがあれば立派な工場なので、クラウドファンティングも視野に入れて、ものづくりのほうもソーシャルにしていったらおもしろいだろうなと考えているところです。

ちなみに、JAMMIN のTシャツには、NPO側からの投資はまったく必要ありません。こちらから「いっしょにやりませんか?」と声をかけて、「いいですよ」と応えてさえもらえば、あとはわたしたちがデザインをして、販売もやって、プリントも出荷も引き受けて、チャリティーを口座に入金する。それを待っていただけばいいんです。資金的な負担は振込手数料くらいでしょうか。それよりもNPOさんには本業のほうに時間と頭をさいてほしい。NPO関係者さんがもしいらっしゃれば、Tシャツ、タダでつくります。ぜひよろしく!

講 師

keigo-takahashi
高橋佳吾

JAMMIN合同会社 Co-founder/COO

1983年愛知県名古屋市生まれ。2008年パシフィックコンサルタンツ株式会社へ就職。国内外の上下水道のコンサルティング、社内ベンチャー事業に従事。会社員時代に途上国の現状を目の当たりにし「ほんの少しでもいいから自分たちに出来ることをしよう」と決意。同期だった西田太一とともにチャリティー専門ファッションブランドJAMMINを2014年にローンチ。現在までに100を超えるNGO/NPOと連携し、600万円以上をチャリティー。

<メディア掲載>
日本テレビ「NEW ZERO」、日本経済新聞、産経新聞、読売新聞、京都新聞、ソトコト、オルタナS、greeenz.jpなど、40を超えるメディアに出演

<受賞歴>
R-sic 2014 CROSS POINT ファイナリスト
京都信用金庫「第3回地域の起業家大賞」優秀賞 など

JAMMIN