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2016年12月21日(水) Think College Vol.50

NGOを知ることから始まるわたしと世界

講師:山田直樹 (特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC) 能力強化グループ)

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世の中の課題に取り組む人のお話を聴いて、一緒に考える講座シリーズ「Think College」。
今回のテーマは「NGOってなに?」です。
みなさんは、NGOについて、どんなイメージを持っていますか?
ボランティア? 海外の子どもを助けている? 意識高い系?
聞いたことはあるけれど、実際は何をやっているのかわからない?
でも、その取り組みをちょっと知るだけでも、
遠い国のことだと思っていたことが、わたしたちのすぐ身近なところに
つながっていることに気づくはずです。
NGOのお話を聞きながら、わたしたちと世界の、見えないつながりに思いをはせる。
そして、わたしたちにもできるNGOとの関わり方について、一緒に考えてみませんか?

NGOを支援するNGO

山田

あまり知られていないと思いますが、「国際協力NGOセンター(JANIC)」は、NGOを支援するNGOという中間支援組織です。NGOをネットワーキングで結び、企業や行政などにつなげることで、よりよい社会の実現を目指しています。

2015年9月、国連で「持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals)」が採択されました。貧困や食料、経済格差や環境保護、世界平和といった17項目のそれぞれにゴールが設定されており、日本も加盟しています。NGOや市民だけでなく、企業または一般の人びとに対する指針として、JANICはこれを推し進め、広げていく活動に取り組んでいます。

日本国内にはいま、500団体くらいのNGO があるといわれています。JANICは、そのうちの150団体ほどといっしょに仕事をしています。たとえば、わたしたちが一緒に仕事をしている「ワールドビジョン」というNGOは、おもな活動としてアフリカの医療や農業、農村の支援などを行っています。

そもそもNGOとは何なのか。まず、NGO(Non Governmental Organization=非政府組織)とNPO(Nonprofit Organization=民間の非営利組織)はよく混同されるのですが、この違いについて。じつは両者に特定の概念とか成り立ちなどによる区別は特にありません。傾向として、日本では国内で活動する団体をNPOと呼び、国際協力や海外で活動する団体をNGOと呼んで区別しています。前述のように国内にあるNGOは500団体くらいですが、対するNPOはおよそ3万団体にのぼります。NPOのなかのひとつのカテゴリーがNGOと考えればわかりやすいでしょうか。

国際協力とひと口でいっても、国連などの国際機関をはじめ、日本政府によるODA(Official Development Assistance=政府開発援助)などいろいろな機関が関わっています。じつはこのODA の予算がすごい金額で、それをもとに国際協力機構(JICA)や外務省、財務省などが連携して国際的な援助を行っています。このほか、埼玉県環境科学国際センターや東京都のボランティアセンターなど、多くの自治体による取り組みもあります。

企業においてもCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)やBOPビジネス(年間所得が3000ドル以下の低所得者層=Bottom/Base of Pyramid層に有益でありながら、企業の発展もはかることのできる持続的なビジネス)を推し進め、国際協力機関やNGOなどとタッグを組んでいこうという気運が高まっています。そうしたいろいろな取り組みのなかに、NGOという枠組みがあるわけです。

アジア圏で活動する日本のNGO

山田

NGOの活動範囲は、もちろん世界各国にまたがっているのですが、この資料に「68%」と示されているように、日本のNGOの活動拠点はやはりアジア圏が中心です。理由としては距離がいちばん近いこと。現地で直接支援をする場合、移動にも物資の輸送にも、遠ければ遠いほどコストがよけいにかかってしまうからです。

さらに、もうひとつの理由として、歴史的背景があります。1970年代、インドシナから難民の大量流失がありました。「ボート・ピープル」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。当時の日本では「NGOブーム」といっても過言ではないほど支援の気運が高まりました。さらにカンボジアでは、ポルポト政権による大虐殺がおこりました。ポルポト政権が倒れたときには、日本からも多くの人々がNGOを設立し、支援に向かいました。

これに対してヨーロッパのNGOはアフリカに多く、アメリカのNGOは南米やアフリカに多い。これも距離的あるいは歴史的な理由ではないかと思います。

日本のNGO、500団体の活動する分野を概観すると、教育、開発、保健医療、環境問題や人権問題など、じつにいろいろなジャンルにわたっています。そのなかでいちばん多いのが教育分野です。

教育支援の内容もさまざまです。たとえば、現地に行って学校を建てる。学校を建てるだけではなく、じっさいに幼児教育や中高生向けの高等教育を行う。さらに専門技術を習得するための教育などもあります。このほか、ストリートチルドレンの保護や孤児院の設立なども行っています。

NGOの財政状況

山田

営利団体ではないので、「NGOの財政は厳しい」というイメージをお持ちの方が多いようです。というより、NGOの組織そのものに対して、みなさんのなかにはあまり具体的なイメージがないのではないでしょうか。

日本社会では、「NGO=奉仕」、「奉仕=ボランティア」、そして「ボランティア=無給」ととらえられがちです。しかし、NGOも企業と同様にちゃんとした組織形態があって運営されており、スタッフには給与も支払われています。大きな団体になると、総会や理事会も開かれます。事務局というのがじっさいの現場であり、スタッフが働くオフィスにあたります。

では、企業とNGOは何が違うのか。一番の違いは「お金の使い道」です。
企業の場合は利益を生みだし、自社製品を生みだし、顧客に対してよいサービスを提供し、株主に対しては利益を還元します。これに対してNGOは、現地の人を支援するという目的のために活動しています。ですから、お金をいくら得たとしても、あまり還元されないところに資金を投入するため、どうしても財政が厳しくなってしまうわけです。

2015年の日本のNGOの財源を見てみると、50%は寄付金、25%は助成金でまかなわれています。ついで受託事業収入が13%、会費が4%となっています(資料:NGOデータブック2016)

寄付金には、おもに一般の個人からの寄付のほか、企業からの寄付があります。大企業ならば何千万、何億円といった大口もけっこうあります。宗教系の法人や団体からの寄付もあります。

このほか、企業や行政からの助成金が、だいたい数百万円から大きなものでは億単位の規模で入ってきます。受託事業収益というのは行政から「2000万円でこの事業をやってください」と請け負う活動で、企業から請け負うこともあります。

また「自主事業」により自分たちで利益を生みだして運営している団体もあります。こうした取り組みは、今までになかったNGOの流れかなと思っています。
いま多いのがフェアトレードです。その名の通り公平な貿易ということで、現地の人のため、現地の人が生産をして、仲介料などのマージンをなるべく少なくして、適正価格で販売する。そして、その利益を生産者の人にバックするというものです。

「クロスフィールズ」という団体は、企業の人たちに対して海外研修をアレンジするという、ちょっと面白いことをやっています。コンサルタントとして企業に関わりながら海外研修を企画したり、現地の受け入れ先を提供したりするわけです。たとえばコンピュータのエンジニアリングをしている企業があれば、パソコン関係で困っている現地への人材派遣をコーディネートする。海外への支援になると同時に、企業のなかでのグローバルな人材育成をはかることができます。これまではフェアトレードなどモノが主流だったところに、ヒトに観点を置いた展開が進みつつあるように感じています。

NGOスタッフに聞く「ここがgood!」「ここがNG!」

山田

いろいろなNGOのスタッフに調査をして「NGOのここがgood!」なポイントを聞いてみました。まず出てきたのが、とくに被災地で交わされる「ありがとう」の言葉。NGOの多くは海外を中心に活動しているのですが、3.11や熊本の地震などの際には、緊急支援ということで日本国内の被災地でも活動をしています。そんなときに、「ありがとう」という言葉をかけられると、やりがいを実感する人が多いようです。

また、NGOの仕事の特徴として、計画立案から事業運営、主行事の評価まで全プロセスに関われるため、エンドユーザーとの距離がとても近いという点も「good!」なポイントに挙げられます。たとえば被災地の方であったり、カンボジアの子どもたちであったり、何かしら支援したときに、反応をじかに見ることができます。

逆にNGOで働く人たちの「ここがNG!」はどんなことでしょうか?
調査の結果でわたしがいちばん面白いと感じたのは、「NGOにいるのはエキセントリックな人や過激な人という固定概念がある」という点です。

わたしも学生時代にいろいろなNGOの活動に参加して、たくさんの人に会いました。みんなパワフルな人ばかりで、いままで会ったことがないような人がいっぱいいました。そのため、わたし自身も、NGOには破天荒な人が多いというイメージを持っていましたし、じっさいにエキセントリックな人や破天荒な人もたくさんいます。しかし、基本的にNGOの仕事のほとんどはオフィスでPCを叩いて、各種調整をして、文書をつくって……と、事務作業が大部分で、それをきちんとこなしていくスタッフのほとんどは「ごく普通の人」なのです。

たとえばJANICのスタッフはいま、約16名。NGOとしては多いほうです。ほかの団体では、だいたい2、3名で事務局を運営しているところが多く、有給のスタッフは1人か2人、あとは無給というのが現状です。

財源から見ても半分以上は寄付金収入ですから、わたし自身の収入も寄付のなかからいただいて成り立っていることになります。寄付というのは、思いのこもったお金ですから、そういった意味では「いい仕事をしよう!」というモチベーションや責任感の源になっていると感じています。

NGOとの接点はどこ?

山田

国際協力が叫ばれ、グローバルな社会になってきたといわれていますが、いまの日本社会とNGOとの関わりはまだまだ希薄です。わたしたちが生きている社会のなかで、どのようなところにNGOとの接点があるのかを考えてみると、だいたいつぎの3つに集約されます。

(1)街なかでの関わり
最近、フェアトレード商品やチャリティーイベントが増えてきています。
フェアトレード商品も、昔は現地の人とNGOが生産して、ひとつのNGOが販売していたので、価格帯もブランディングもまったくできていませんでした。

しかし、近年ではフェアトレードのやり方も柔軟になってきていて、たとえば「ACE(エース)」という児童労働の問題に取り組んでいる団体は、森永などの企業とコラボレーションをして、商品販売をしています。もしみなさんが森永のチョコレートを買えば、そのうちのいくらかが、児童労働のための活動費になる、というものです。少し前には、ボルヴィックとユニセフのコラボレーションによる「1 L for 10 L=ワンリッターフォーテンリッター」といったキャンペーンも盛り上がりました。

チャリティーイベントのほうは、たとえばチャリティーランというかたちで皇居のまわりをいっしょに走ったり、赤い羽根募金のようなかたちで、ホワイトリボンのイベントを行ったりもします。国際協力やNGOのことは知らなかったとしても、マラソンなどのカテゴリーを通じて、新しい世界に踏み入るきっかけになることが期待できます。

(2)メディアを通じた関わり
ニュースやバラエティー番組でも、NGOやNPOが取り上げられるようになってきています。「こんなところに日本人」など、現地に住む日本人を特集するテレビ番組を見ていると、やはり多いのがNGO関係者や青年海外協力隊で活動してきた人たちです。JANICでも一般のNGOに就職したい方のためにキャリアガイダンスを行っていますが、19〜20歳くらいの若い人たちのなかには、こういったコンテンツを通じてNGOへの関心を高め、関わりをもつ方が増えてきているように感じています。

(3)自分との関わり
ふだん気がつかないかもしれませんが、ものを買ったり、どこかへ行ったり、自分のとる行動は一つひとつ、日本だけでは完結せず世界とつながっています。いま、みなさんがお持ちのペンやノートは、どこでつくられたものか、どのような条件のもとで生産されたものか、どのようなルートで日本に来たのか。ちょっと考えてみるだけでも、自分の持っているモノや行動が世界とつながっていると実感できるはずです。

わたしにとって、大きな転機となったのも、この「自分との関わり」を意識したことでした。学生時代、フィリピンを旅したときにスモーキーマウンテンというところを訪れました。そこにあるのはゴミの山。日本であればちゃんと焼却施設をつくるところですが、フィリピンやカンボジアなど途上国になると、広大な場所をとってゴミをたくさん集めて放置しておくこともあります。そんな地域で、ゴミを拾いながら暮らしている子どもたちが少なからずいる。学生だったわたしは、その現場に立ってとてつもないショックを受け、それまで20年間生きてきた自分の常識が覆った思いがしました。

さらに、そのときNGOのスタッフの方が教えてくれたことがありました。あるとき、日本とフィリピンのなかで自由貿易協定を結びました。すると昔より関税が少なくなって、日本とフィリピンのあいだの貿易が盛んになった。そこで日本が何を送ってきたかというと、大量のコンテナに詰め込まれたゴミだったというのです。
日本では、ゴミはみんな焼却施設で燃やされていると思っていたけれど、もしかしたらそのままフィリピンに運ばれて、スモーキーマウンテンのような環境をつくりだしているのかもしれない。そう考えるとすごくショックでした。そのときの体験から、いまでは自分の一つひとつの行動が、どこでなにを引き起こすことになるのか、よく考えて行動しなくてはいけないと自戒するようになりました。

とはいえ、これは本当に難しいことで、わたしはいま着ている服も、飲んでいる水にも食べ物にもぜんぜんこだわりはないのですけれど、なるべく環境に負荷を与えないようなかたちで生きていいきたいと考えるようにはなっています。

いずれにしても、こういったことを実感できたり衝撃を受けたりする体験というのは、貴重なものだったと思っています。

JANICのスタッフとしてNGOの活動への理解を広めるために、小学校へ話をしにいくこともあります。そんなときは、「みなさんが持っているペンを見てください。そこにMADE IN…と書かれている国名はどこですか?」などと問いかけます。そんな身近でささいなところから、私たちは世界とつながっているのです。その先には、労働を強制される子どもたちや、ゴミの山で生活している人たちがいるかもしれない。そして、それをなんとかしようとしているNGO方々が活動しているかもしれません。そんなことを、ぜひみなさんにも考えていただけたらなと思っています。

私たちの、一歩の踏みだし方

山田

ここまで、NGOの漠然としたイメージを払拭しようと、少しだけ説明してきました。今後はぜひ「知る」「応援する」「参加する」というかたちでさらに一歩を踏みだしていただきたいと思います。

今回、このお話がみなさんにとっての「知る」の第一歩になるかもしれません。さらに知識を深めたくなったり、関心をお持ちでしたら、NGOにも足を運んでみてください。

「応援する」というところでは、NGOのスタッフとしてはちょっといいにくいのですが、寄付をお願いしています。先ほどお話ししたとおり、NGOの財源の半分は寄付によって成り立っています。とはいえ、自分との接点がないところには、なかなか寄付というのはしにくいものです。自分も今、あるNGO に寄付をしているのですけれど、それはフィリピンで活動している子どもたちに会ったことがきっかけでした。当時、小学生だったその子たちが、今は高校生くらいになっている。その姿が目に浮かぶから、少ない給料のなかでも、ちょっと支援したいなという気持ちになるわけです。

寄付、というと敷居が高いと感じる人には、「Ready for=レディーフォー」のようなクラウドファンディングから入るのもいいと思います。いいなと思えるプロジェクトに対して、自分で金額を設定して、復興支援もできます。

「参加する」というのは、インターンやボランティア、スタディーツアーなどもっと具体的な話になります。企業や旅行会社のツアーでも、海外のスタディーツァーが企画されていますので、そういうものにも、ご関心があればぜひ参加してみてください。

講 師

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山田直樹

特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター 能力強化グループ

学生時代から様々なNGOの活動に参加し、在学中に1年休学しボランティアしながら世界一周(ぼらいやー)。 卒業後は、ボランティアコーディネーター、ゲストハウススタッフとしてインドにて2年間勤務。 帰国後はキャリア教育を行うNPOを経て2015年より国際協力NGOセンター(JANIC)勤務開始。

国際協力NGOセンター(JANIC)