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パリ在住のフードジャーナリスト伊藤文さんのコラム

ラグジュアリーなパリのフード事情

パリ在住のフードジャーナリスト伊藤文さんのコラム

ラグジュアリーなパリのフード事情

昔からグルメの街として名高い、美食の都 パリ。
パリ在住の食のジャーナリストとして活動する伊藤文さんが、世界中の食通をうならせる
数々の美食の中から選りすぐりのものをピックアップして、毎回お伝えいたします。

ヘネシーの郷、コニャック、その本拠地を訪ねて

2025年11月28日(金)

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パリから南西へ、新幹線でおよそ2時間。ボルドーに至る少し手前、大西洋にほど近い穏やかな丘陵地帯に、小さな町コニャックがある。1765年に誕生し、創業から250年以上の歴史を誇るコニャックの名門「ヘネシー」は、この地で「体験・訪問プログラム」を企画。いま、世界中から注目を集めている。


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「ヘネシー」という名前も、「コニャック」という言葉も、私たち日本人にとってはどこか馴染みのある響きを持っています。しかしながら、それが正確に何を意味するのかをご存じの方は、案外少ないのではないでしょうか。 コニャックとは、まずは町の名前です。パリから南西へ新幹線でおよそ2時間。ボルドーに至る少し手前、大西洋にほど近い丘陵地帯、シャラント川に沿って広がる小さな町のことです。この地は、フランス・ルネサンスの父と呼ばれる16世紀の王、フランソワ一世の生誕の地としても知られています。町を歩くと、石造りの建物が静かに並び、川のほとりには古い帆船がゆっくりと浮かび、まるで時が止まったかのような光景が広がっています。


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そして、この町こそが、世界に名高い高級ブランデー「コニャック」の生まれた場所であり、名門「ヘネシー」が250年以上もの歳月をかけて、その伝統を守り続けてきた本拠地なのです。二度の蒸留とオーク樽での長い熟成を経て、透明な原酒は琥珀色の液体へと姿を変えます。その香りと味わいは、時を超えて世界中の人々に愛され続けています。「ヘネシー」の歴史を遡りますと、1765年、アイルランド出身の軍人リシャール・ヘネシーが、この地に自らの名を冠した蒸留所を創設したのが始まりでした。彼は、愛してやまないこの土地のブドウと、蒸留という芸術を通じて、卓越した香りと味わいを世界に届けたいという情熱に駆られていたのです。


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創業から数十年のうちに、ヘネシーは単なる蒸留所ではなく、「アート・オブ・ブレンディング(調合の芸術)」の象徴へと成長しました。19世紀初頭には、ブレンディングの名手ジャン・フィリュを「マスター・ブレンダー」として迎え入れ、以降8代にわたり、フィリュ家がクラフトマンシップの哲学を携え、その役割を継承しているのも驚くべきことです。今日、メゾン・ヘネシーはコニャック地方の中心に広がる約1800ヘクタールのブドウ畑と、30万樽を超える原酒のストックを有しています。この伝統こそが、世界中で「コニャックの象徴」として愛され続ける、ヘネシーの真髄だといっていいでしょう。 こうした「ヘネシー」の歴史と技術を、より多くの方々に知っていただきたい。その思いから生まれたのが、この「体験・訪問プログラム」です。


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ヘネシーならではの、最もスタンダードかつスペシャルな体験が「ヘネシー・イニシエーション」です。見学の始まりは、ヘネシーの受付施設から、シャラント川に停泊するボートに乗り込み、熟成カーヴのある対岸へ渡るところから始まります。この演出は、かつてコニャックの樽を海へ運んでいた平底船へのオマージュでもあるといいます。船上からは、フランソワ一世が生まれたコニャック城の城壁を望むこともできます。


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そして、メインの熟成カーヴの見学へ。薄暗いカーヴに、数百ものオーク樽が整然と並んでいます。樽には、チョークで収穫年や蒸留所名が記されてあり、積み重なる歴史の源泉に出会うことができると言ったらいいでしょうか。 ヘネシーを代表する2種のコニャック、つまりHennessy V.S(最低でも2年以上熟成されたオー・ド・ヴィ(原酒)をブレンドしたもの)とHennessy V.S.O.P(平均して4~15年ほど熟成された原酒をブレンドしたもの)のテイスティングも用意されており、こうした背景を知った上でコニャックの味わいは格別です。ストレート、ロック、そしてカクテルの3つの味わい方でサービス。アガペシロップとライム、オレンジジュースの「ヘネシー・マルガリータ」や、スイートベルモットを加えた「ヘネシー・マンハッタン」のオリジナルカクテルなど、コニャックの新しい楽しみ方を知ることができるのも発見でした。


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また、コニャックの旧市街地の中心に位置する工房「アトリエ・エディション・ラール」では、コニャックを贈呈する際に付け加える、職人芸のクラフトマンシップを実際に体験することができます。それはカリグラフィとミニボトルの首にかける絹の組紐、そして蝋付けの職人芸でした。 リシャール・ヘネシー創業期に交わされた商取引の書簡と、ルイ王朝による特許状の写しも展示させています。「Louis par la grâce de Dieu, Roy de France et de Navarre(神の恩寵によるフランス王ルイ)」と記された文書は、この地の蒸留・輸送業を認可した公式の王室文書でした。赤い封蝋の残る手紙からは、当時の商人たちの息づかいが伝わるとともに、職人とのふれあいや体験により、長い時を経てこの歴史とクラフトマンシップを守り続ける老舗の矜持が感じられました。


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Photos/Jas Hennessy & Co (Albane de Roffignac, Christophe Mariot, Alain Benoit, Benoit Lapray), Aya ITO

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フードジャーナリスト

伊藤 文

Aya Ito

1998年から、在仏食ジャーナリスト・アナリストとして活動。
数々のメディアでの取材・執筆、食関係の本の出版、翻訳の経験、また食分野で活躍する様々なタレント(経営者、シェフ、生産者など)との深い交流を生かし、食を通して日仏をつなぐDOMAを創立(在仏)。
2017年には、パリ12区バスティーユ界隈にショールーム・アトリエ・物販店「atelier DOMA」をオープンする。
和庖丁の販売、メンテナンス、研ぎ教室を中心に、日本の食文化やものづくりの精神を伝える事業も展開する。

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