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パリ在住のフードジャーナリスト伊藤文さんのコラム

ラグジュアリーなパリのフード事情

パリ在住のフードジャーナリスト伊藤文さんのコラム

ラグジュアリーなパリのフード事情

昔からグルメの街として名高い、美食の都 パリ。
パリ在住の食のジャーナリストとして活動する伊藤文さんが、世界中の食通をうならせる
数々の美食の中から選りすぐりのものをピックアップして、毎回お伝えいたします。

パリ在住のフードジャーナリスト
伊藤文さんのコラム

パリに誕生したピスタチオ専門店
「ラ・メゾン・ド・ラ・ピスタッシュ」の挑戦

2026年8月12日(水)

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世界中のピスタチオの魅力を遍く知ることのできるピスタチオ専門店がパリ7区にオープン。フランスにピスタチオ文化を蘇らせようと、南仏・プロヴァンスを愛する「ロクシタン」や「Oliviers & Co.」の創業者が手がける注目の店。


葉の前で微笑む眼鏡の男性、ラ・メゾン・ド・ラ・ピスタッシュの外観と木目調の店内に並ぶ商品


南仏プロヴァンス、ラベンダー畑が一面に広がることで知られるヴァランソル高原。ここから、失われつつあったピスタチオ栽培を復興する壮大な挑戦が始まりました。それが、「ラ・メゾン・ド・ラ・ピスタッシュ」の原点です。

プロジェクトを率いるのは、ロクシタン創業者として知られるオリヴィエ・ボーサン氏。オリーブやアーモンドとともに、この地の風景を彩ってきたピスタチオを再びプロヴァンスに根付かせたい。そんな想いから、2017年に栽培復興プロジェクトが始動しました。やがて農家や研究者、生産者を巻き込みながら産地づくりが進められ、その理念を世界へ発信する場として誕生したのが、「ラ・メゾン・ド・ラ・ピスタッシュ」です。


コルク栓の試験管に入った各地産ピスタチオの瓶が並び、右には木製テーブル上の焙煎機と葉の壁画のある落ち着いた店内


ピスタチオは、オリーブやアーモンドとともに三千年以上にわたり地中海文明を支えてきた果樹のひとつです。原産は現在のイラン北東部からアフガニスタン、中央アジアにかけての地域にあって、人類が栽培を始めたのは古代ペルシャ時代だそう。およそ三~四千年前にさかのぼるといわれています。その美しい翡翠色の実は、古くから「緑の黄金」と称えられて、王侯貴族にも愛されてきたことでもしられています。「ラ・メゾン・ド・ラ・ピスタッシュ」は、この果実が育んできた歴史や風土、生産者の物語までも伝えることを使命しているのです。


左に花のつぼみが映るテレビと写真立て、右にフランス語のピスタチオ品種図ポスターが飾られた店内


店内には、世界各地のテロワールから厳選した「グラン・クリュ」のピスタチオが並びます。イラン・ザグロス山脈の野生種をはじめ、やはりイランのカズヴィーン、シチリア・ブロンテDOP、ギリシャ・エギナAOP、トルコ・ガジアンテップ、スペイン・ラ・マンチャ、イタリア・バジリカータなど。色も大きさも異なるピスタチオ。それぞれの土地が育む風味の違いを、一粒ずつ味わいながら旅するように楽しめるのが、この店ならではの魅力です。またロースト用のピスタチオが届けば、その場でローストしていただけるというサービスも。


左は冷凍ショーケースとメニュー、中央は店内のディスプレイ、右は男性がピスタチオ味のアイスを提供する男性の姿


ワインなら「グラン・クリュ」とでも呼んでもいいような、ピスタチオ群。それをアイスクリームとして、そのまま味わえるのが魅力的で、店の目玉商品の一つ。夏場はひっきりなしにお客が訪れていました。ザグロス山脈の野生種はスパイシーで塩味も感じる味わい。トルコ・アナトリア産は滑らかなテクスチャーが秀逸。ローストしたシチリア産は力強いアロマとコクが秀でている。また、オレンジブロッサムウォーター入りのギリシャ・オリエンタル風オリジナルレシピもあります。トッピングで砕いたピスタチオを乗せてもらうのも一興でしょう。


世界各国のピスタチオが並ぶ木製カウンターと植物画が飾られた温かな雰囲気の店内


また一際目を引くのは、アペリティフ・カウンターです。スモークパプリカやローズ&カルダモン、ザアタル、サフランなど、多彩なスパイスをまとったオリジナルフレーバーのピスタチオ。あるいはナチュールでも、ローストしたもの、していないもののチョイスがあり、味わいも七変化で、アペリティフを彩るスナックになるに違いありません。


木製棚に並ぶピスタチオ菓子と缶・瓶の商品展示が飾られた木の温もりを感じる店内風景


また、ピスタチオの魅力を余すことなく表現した、多彩な商品も並びます。ブランドを象徴するのは、産地ごとの個性を味わえるスプレッド。ピスタチオ・プラリネやチョコレートで包んだピスタチオ、マカロン、メレンゲ、サブレ、ヌガー、ロクム、カルソンなど、地中海から中東へと続く食文化を映した菓子も充実しています。さらに、シチリア産ピスタチオのペーストやジェノベーゼ風ピスタチオペスト、ピスタチオオイル、シェーブルチーズとピスタチオのスプレッド、イラン・ザグロス山脈の野生ピスタチオを使ったピクルスなど、食卓を彩るセイボリーも豊富。甘味から塩味まで、ピスタチオの新たな魅力に出会える空間です。

今年の秋には、プロヴァンスで復活したピスタチオ畑で初めての収穫が予定されているそうです。その土地で育まれたピスタチオが、どんな香りや味わいを見せてくれるのか。新たなプロヴァンスの味覚の誕生を、今から楽しみに待ちたいと思います。




Photos/FXE, Aya ITO

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フードジャーナリスト

伊藤 文

Aya Ito

1998年から、在仏食ジャーナリスト・アナリストとして活動。
数々のメディアでの取材・執筆、食関係の本の出版、翻訳の経験、また食分野で活躍する様々なタレント(経営者、シェフ、生産者など)との深い交流を生かし、食を通して日仏をつなぐDOMAを創立(在仏)。
2017年には、パリ12区バスティーユ界隈にショールーム・アトリエ・物販店「atelier DOMA」をオープンする。
和庖丁の販売、メンテナンス、研ぎ教室を中心に、日本の食文化やものづくりの精神を伝える事業も展開する。

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